古の名言集
メニュー
呻吟語
- 人物鑑定 -
1. 徳の順位
 深みがあり、どっしりと落ち着いていれば、これは第一等の資質である。小さなことにこだわらない力強い人物であれば、第二等の資質である。かしこくて才能豊かであれば、第三等の資質である。
 深沈厚重、是第一等資質。磊落豪雄、是第二等資質。聰明才弁、是第三等資質。


2.理解を深める
 道理を深く体得した人は、わかりやすく話す能力も持ち合わせている。難しい言葉を使う人は、道理の理解が不足している人である。
 惟得道之深者、然後能浅言。凡深言者、得道之浅者也。


3.やる気の観察
 大きな仕事、困難な仕事で、責任を観察する。逆境や順境の時には、心の広さを観察する。機嫌の良し悪しで教養を観察する。集団行動で識見を観察する。
 大事難事看担当。逆境順境看襟度。臨喜臨怒看涵養。群行群止看識見。


4.実力のある人
 暇な時には工夫を凝らす。手を抜きたくなるときは点検を行う。笑ったり、喜んだりしているときは教養を見る。悩み、苦しんでいるときは力量が試される。
 怠惰時看工夫、脱略時看点検、喜怒時看涵養、患難時看力量。


5.見えない物を見る
 正面の千里先を見るのは、背後の1寸先を見るより容易である。そのような理由で、表面を見ることは難しくなく、内面を見るのが難しいのだ。目につく物を見るのは難しくなく、目につかない物を見るのは難しい。これは世間全体の迷うところであり、智者だけができる芸当である。
 見前面之千里、不若見背後之一寸。故達観非難、而反観為難。見見非難、而見不見為難。此挙世之所迷、而智者之独覚也。


6.聖人と盗賊
 名声を蔵にしまい、利益から遠ざかり、朝早くから夜遅くまで一心に努力する者は、聖人である。名声のために学問を修め、利益のために励み、朝早くから夜遅くまで一心に努力する者は賢人である。組織図にも載らず、利益を上げるでもなく、やる気がなく、志も低く、徳を乱れさせ、仕事を廃業する者は、一般人である。虚名を輝かし、利益を貪(むさぼ)り、そして悪(わる)賢(がしこ)い心を持ち、陰に隠れて鳥獣のように振る舞っている者は、盗賊である。
 蔵名遠利、夙夜汲汲実行者、聖人也。為名修、為利勧、夙夜汲汲実行者、賢人也。不占名標、不尋利孔、気昏志惰、荒徳廃業者、衆人也。R虚名、漁実利、而内存狡獪之心、陰為鳥獣之行者、盗賊也。


7.努力の意味
 古今の士には、おおむね三種類の人格がある。上等の士は名声を好まない。中等の士は名声を好む。下等の士は名声を好むことの理由さえ知らない。
 古今士率有三品。上士不好名。中士好名。下士不知好名。


8.道徳と欲望
 上等の士は道徳を重んじる。中等の士は功績を立て、名をあげることを重んじる。下等の士は弁舌を重んじる。論ずるに足らない人は自分の欲望を重んじる。
 上士重道徳。中士重功名。下士重辞章。斗?人重富貴。


9.最低の極み
 欲に従う時は生臭いものにたかるようであり、まともな事を聞くと苦虫を噛んだようになる。これは最低を極めた者である。
 従欲則如附羶、見道則若嚼?、此下愚之極者也。


10.物欲と仕事量
 天の摂理をよくよく理解している者は、人欲には乏しい。私事において貪欲な者は、公務において必ず手を抜く。虚文において盛んに輝く者は、本当の実績は必ず薄い。
 於天理汲汲者、於人欲必淡。於私事眈眈者、於公務必疎。於虚文YY者、於本実必薄。


11.君子の見極め
 何事もない時には、大勢の小人を埋蔵すること著しい。多事多難の時には、大勢の君子を識別できる。
 無事時、埋蔵著許多小人。多事時、識破了許多君子。


12.少と多
 人々は少ないことを心配しているが、多いことのほうが心配なのだと知らない。ただ智者のみが多いことを心配する。
 人皆知少之為憂、而不知多之為憂也。惟智者憂多。


13.小人の常套手段
 利を見れば前に進み、害を見れば後ろに退き、功績を共有すれば美味しい所はすべて自分で独占し、過ちを共有すれば罰は相手に押し付ける。これは小人の常套手段であり、一人前の立派な大人のすることではない。
 見利向前、見害退後、同功専美於己、同過委罪於人、此小人恒態、而丈夫之恥行也。