古の名言集
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呻吟語
- 対人関係 -
1.心のケア
 子供が親の面倒をみるには、心の面倒を見るのが最もよい。体を労(いた)わるのはその次である。最低なのは体を労わって老いた心を心配しないことである。最低の最低は、親の面倒を手紙で済ませ、体の心配もしないことだ。
 人子之事親也、事心為上。事身次之。最下事身而不恤其心。又其下事之以文、而不恤其身。


2.隔たりの排除
 【隔】の一字は、人情の大病である。だから、君子、親子、夫婦、友人、上下関係の交流においては、義務的に【隔】を排除する。この字を排除せずに、怨みを買わなかったり、裏切られなかったりしたことは過去に例がない。
 隔之一字、人情之大患。故君臣、父子、夫婦、朋友、上下之交、務去隔。此字不去而不怨叛者、未之有也。


3.人生の注意事項
 言葉を語る時、いい加減な事を言うのが最も良くない。事を行うにあたっては過酷であることが最も良くない。心の手当てで最も良くないことは深く傷つけることである。
 言語之悪、莫大於苛刻。心術之悪、莫大於深険。


4.他人を非難しない
 世渡りにおいて、他人の悪口を言うことが第一の欠点となる。不善は彼がしたのだ。どうして自分から関与する必要があるのだ。
 処世、以譏?為第一病痛。不善在彼。我何与焉。


5.過ちを認める
 過ちをおかしたのは一つの過ちである。過ちを『その通りだ』と認めなければ、またしても一つ過ちをおかす。一度認めれば両方の過ちは消えてなくなる。一度認めることができなかったために両方の過ちから逃れることができなくなった。言い訳をして非を飾る例の者は、果たして何のために言い訳をしているのか…。
 夕過之一過。不肯認過、又是一過。一認則両過都無。一不認則両過不免。彼強弁以飾非者、果何為也。


6.予想外の経験
 予想外の事件が発生したら、知者といえども困窮する。こんなときは責めて苦しめてはならない。
 事出於以外、雖智者亦窮。不可以苛責也。


7.薬の用途
 人参(にんじん)、茯苓(ぶくりょう)、当帰(とうき)、黄き(おうき)は、本来人に有益なものである。しかし、体質と合わなければ、かえって病を重くする。親切や思いやる心は、本来人を愛する気持ちである。しかし、相手を間違えると、かえって禍を招く。故に君子はこれを慎むのだ。
 参苓帰?、本益人也。而与身無当、反以益病。親厚懇切、本愛人也。而与人無当、反以速禍。故君子慎焉。


8.はっきりと言わない
 人を責めるには、内に含み持っているものを出さないことが必要で、すべてを出し切ることを嫌なこととして避ける。遠まわしに言うことが必要で、はっきりと言うことを嫌なこととして避ける。今、子弟や父兄の責めを受ければ、耐えられない所がある。まして他人ならなおさらである。孔子も言っている。『忠告してこれを善道し、不可なれば則ち止む』と。この言葉は交際を全(まっと)うするのみならず、精神を成長させる。
 責人要含蓄、忌太尽。要委婉、忌太直。要疑似、忌太真。今子弟受父兄之責也、尚有所不堪。而況他人乎。孔子曰、忠告而善道之、不可則止。此語不止全交、亦可養気。


9.順調の効果
 楽しいことがなく、苦しいことばかりでは、親子の関係も保てない。まして一般人では尚更(なおさら)である。楽しいことばかりで、苦しいことがなければ、辺境の野蛮人「戎(じゅう)と狄(てき)」でさえ親しみ合う。まして一般人では尚更である。
 無所楽、有所苦、即父子不相保也。而況民乎。有所楽、無所苦、即戎狄且相親也。而況民乎。


10.お世辞の効果
 二人とも相手のことを非難すれば、家を壊すまで止めない。ただ良く考えて、自分自身の『すみません』という一言で、どれだけ早く関係を改善できることだろう。二人して自分のことを正しいと主張すれば、反目して罵(ののし)るまで止めない。ただ温かい言葉で、相手の喜ぶ一言で呼んであげれば、どれだけ早く喜びに潤(うるお)うことだろう。
 両人相非、不破家不止。只回頭任自家一句錯、便是無辺受用。両人自是、不反面稽脣不止。只温語称人一句好。便是無限懽忻。


11.小人の扱いかた
 マムシを愛しているからといって撫(な)でたりすれば、その毒を受けてしまうだろう。虎や豹が嫌いだからといって殴(なぐ)りかかれば、噛まれてしまうだろう。小人の対処は、遠ざけず近づけずを心がけよ。
 愛?蝮而撫摩之、鮮不受其毒矣。悪虎豹而搏之、鮮不受其噬矣。処小人、在不遠不近之間。