年間1ミリシーベルトは安全か?
 東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所のメルトダウン事故。この事故によって大量の放射性物質が放出されました。
 事故の後、年間積算線量が20ミリシーベルトを超える区域が計画的避難区域に指定され、住民は避難させられました。はたして、20ミリシーベルトとは具体的にどの程度のリスクなのでしょうか。細胞が癌化するリスクはあるのでしょうか。自分が住んでいる地域の放射線量は安全なのでしょうか。テレビで解説されても、いまひとつ納得できないので、自分なりに調べてみました。ちなみに、シーベルトとは放射線が人体に与える影響の大きさを表わしています。

【20ミリシーベルトによる健康リスク】
 年間20ミリシーベルトという放射線量は、1時間当たりに換算すると0.0023ミリシーベルトの放射線量です。
 飛行機で『東京−ニューヨーク』を往復すると0.19ミリシーベルトの放射線を浴びます。1時間当たりに換算すると放射線量は0.0068ミリシーベルトです。
 両者の放射線量を1時間当たりで比較すると、飛行機で『東京−ニューヨーク』間を移動するほうが放射線によるリスクは3倍ほど高いと言えます。1年間、飛行機に乗って飛び続けるということは考えられませんので、あくまでも短時間での比較でしかありませんが。
1時間当たりの放射線量比較
事例 1時間当たりの放射線量
年間20ミリシーベルト 0.0023ミリシーベルト
飛行機で『東京−ニューヨーク』を往復 0.0068ミリシーベルト


【被曝と癌化の可能性】
 癌になる可能性は誰にでもありますが、累積の放射線量が10ミリシーベルト増えると、癌になる確率が0.04%増えるそうです。
 仮に、一生のうちで癌になる確率を30%としましょう。累積で10ミリシーベルトの放射線を浴びると、癌になる確率は0.04%増加します。つまり、癌になる確率は30.04%になるのです。これが10ミリシーベルトによる健康被害のリスクです。
 計画的避難区域に指定された年間20ミリシーベルトのもとでは、癌になる確率は、一年間で30.08%まで増加します。あなたなら、この増えたリスクで故郷から避難することを望むでしょうか。避難させるべきかどうか非常に難しい判断を迫られ、政府は苦悩したといわれています。

【結論】
 私が住んでいる自治体は、福島第一原子力発電所の事故後、放射線の数値を公表しています。2013年4月末、自治体が公表している一番高い数値は0.108マイクロシーベルト毎時です。1年間の累積でも1ミリシーベルトに満たない数値なのですが、安心できる数値なのでしょうか。
 国連科学委員会の報告(1988年)では、自然界から受ける放射線量の世界平均は、一人当たり年間2.4ミリシーベルトです。日本の平均は、年間1.4ミリシーベルトと推計されています。
 日本の自然放射線量は、世界平均よりも1ミリシーベルトほど少ないのです。ですから、各自治体が公表している放射線量が年間1ミリシーベルトに満たない空間線量なら、その地域は安全だと考えてよいでしょう。
 ちなみに、イランのラムサールという地域の自然放射線量は年間10ミリシーベルトを超えるそうですが、特別な健康障害は報告されていないそうです。

【参考資料】
 以下に、原子力安全研究協会が調査したデータを示します。このデータは、日本人が日常生活で被曝する割合です。自然放射線(自然ガンマ線、宇宙線、天然放射性核種による内部被曝、ラドンおよび娘核種)が全体の39%を占めています。医療による被曝のほうが多いのですが、医療と聞くと安全に思ってしまうのは不思議です。




 ラドンの娘核種…鉛-214、ビスマス-214

 *核種(かくしゅ)とは、陽子と中性子の数により決定される原子核の種類
 *娘核種(むすめ・かくしゅ)とは、放射性崩壊を起こした後の原子


2013年5月6日