アプリって何?
 スマートフォンの登場によって身近になった「アプリ」という言葉。ソフトウェアとの違いは何なのでしょうか。その違いを明確にするため、基本ソフト(OS)の歴史から振り返ってみましょう。

■基本ソフト(OS)
●CP/M

 CP/Mは、1974年に発表されたOSです。デジタル・リサーチ社が開発しました。Z80やi8080といった、80系の8ビットCPUを搭載しているパソコンで使うことができました。フロッピーディスクを使った入出力管理が行なえます。
 CP/Mを使うには、主記憶装置は最低でも16Kバイト、最低一台のフロッピーディスク装置(当時は8インチ)が必要でした。扱いやすい操作方法を実現するためには条件を付ける必要があったのです。
 CP/Mという名称は、Control Program for Microcomputerの頭文字から作られています。マイクロコンピュータのための制御プログラムという意味です。実にOSらしい名称ですね。


●S-OS SWORD

 1985年にS-OS MACEとして発表されたOSです。ソフトバンクが出版していた「Oh!MZ」というシャープ社製のパソコンを扱った雑誌の1985年6月号で発表され、連載が始まりました。マシン語入力ツールやアセンブラ、コンパイラ、エディタなどを発表し、プログラム開発環境が整えられていきました。
 S-OS MACEは、フロッピー・ディスク非対応でしたが、1986年2月号でフロッピー・ディスク対応版のS-OS SWORDが発表されました。
 当時の日本製パソコンの多くは、i8080やZ80といった80系CPUを搭載していました。CPUには互換性があるのに、周辺機器に互換性が無いことから、ソフトウェアは機種ごとに用意しなければなりませんでした。
 S-OSの開発は、周辺機器の違いを吸収できれば、異機種間でも同一のソフトが動かせるのではないかという視点で始まりました。その方法は、一番性能が低いパソコンを基準にOSの仕様を定めるというものでした。

 その後、シャープ社製のパソコン以外にも移植が進みました。PC-8801を皮きりに、16ビットパソコンのPC-9801、エプソン社のPC-98互換機など、様々な機種に移植されました。

 画像を見ていただければ、S-OS SWORDのシステムが12Kバイト(2FFF)に収まっていることに気が付きます。この時代のOSは、とてもシンプルだったのです。

●Human68K

 シャープ社のパソコン、X68000シリーズ専用のOSです。
 OSには、『異機種間の違いを吸収する』という役割の他に、『コンピュータを効率よく動かす』という要素があります。Human68Kのように、機種を限定して開発されたOSのほうが、そのコンピュータが持つ能力を最大限に引き出してくれます。
 S-OSとHuman68Kを比較すると、
    ・S-OS…異機種間の違いを吸収することに重点を置いている
    ・Human68K…コンピュータを効率よく動かすことに重点を置いている
 と言えます。

●Mac OS 7.5.1 (漢字TalK 7.5.1)

 アップルコンピュータ社のマッキントッシュ用に開発されたOSです。インターネットや電子メールも利用でき、MS-DOS形式でフォーマットされたフロッピーディスクの読み書きにも対応していました。MS-DOSが世界的に普及したことで、無視できないフォーマットになっていたのです。実は、MS-DOSフォーマットと呼ばれているだけで、元々はIBMが考案したフォーマットの一つなのですが…。

■ユーティリティソフト
●FORMAT & COPY.Uty

 シャープ社のパソコンに同梱されていたプログラム言語(CZ-8FB02)のシステムディスクに入っていたユーティリティソフトです。フロッピーディスクのフォーマットやコピーをするソフトです。8ビットパソコンの多くは、プログラム言語をOSとして利用していました。

 ユーティリティとは、本来ならOSに組み込んだ方がよいと思われるプログラムです。しかし、昔のパソコンはメモリーの容量が少なかったので、何でもかんでもOSに組み込むことができませんでした。そこで、OSとは切り離してディスクに収めたのです。

■アプリケーションソフト
●HyperCard(ハイパーカード)

 HyperCardは、Mac OS上で動作するアプリケーションを作るためのアプリケーションソフトです。HyperCardを使えば、プログラムが組めなくても簡単なアプリケーションを作ることができました。カードにボタンを貼り付けるとそのボタンが機能し、クリックすると音楽が流れたり、映像が出たりしました。複雑な処理をさせたいときは、HyperTalkと呼ばれるスクリプト言語と組み合わせてアプリケーションを作ります。
 HyperCardは、パッケージソフトとして市販もされました。
●Excel(エクセル)

 Windows上で動作する、表計算ができるアプリケーションソフトです。
●SX-Window

 X68000でGUI環境を実現するためのアプリケーションソフトです。あえてOSに分類しなかった理由は、SX-Windowを実行するには、前述のHuman68Kが必要だからです。SX-Windowは、OSでもあり、アプリケーションでもあるのです。

■アプリとは何か
 OSのことを新聞では基本ソフトと表現しています。基本ソフトという言葉は新聞社が作ったものではなく、まぎれもないコンピュータ用語です。昔のコンピュータは記憶容量が小さかったので、OSにもコンパクトさが求められました。ですから、昔のOSには、コンピュータを操作する上で必要不可欠な機能しか付いていませんでした。当時は、基本ソフトという表現との釣り合いがとれていたのです。

 基本ソフトと呼ばれるOSがあるのだから、応用ソフトと呼ばれる何かがあるのではないか。そう思いませんか? 実は、アプリと呼ばれているものが応用ソフトなんです。
 8ビットCPUの時代は、OSよりもプログラムサイズが大きいアプリがたくさん存在していました。ですから、応用ソフトという言葉も大げさな表現ではなく、市販ソフトとして通用するアプリがたくさん存在していました。

 もう、お気付きだと思いますが、OSとアプリの関係は、基本応用の関係にあります。アプリとは何かをひも解く重要なキーワードが『基本と応用』なのです。コンピュータを使うための基本的なソフトウェアがOSで、そのOSを利用(応用)して作られたソフトウェアがアプリというわけです。前出のHyperCardの他、WordやExcelもアプリケーションの典型です。簡単に言ってしまえば、ユーザーがOS上で使用するソフトは全てアプリなのです。ただし、OSとアプリの中間にユーティリティソフトがあることも忘れないでください。
 
2013年8月14日