『そこに君がいない』


街はずれの小さな喫茶店
一番奥の窓際の席が君の指定席
待ち合わせの日は何故だか空いていた席
今でもそこだけ時間(とき)がとまっている
壁に掛かった小さな風景画
白枠の出窓から差し込む明るい日差し
洒落た造りの店にひとりの雇われマスター
今でも何も変わっていないのに

あの日もここで待ち合わせ
いつも君がいて少し怒り顔
必死に言い訳くり返す僕をまるで見透すよう
必ず払う事になる店の勘定
だけどあの日君の姿はなかった
あの日見れたのは変わりはてた君の微笑み
もう二度と見る事は出来ない君の微笑み
こんな僕の為に急ぐ事はないのに

そこに君がいない
約束の時間はもう一年も過ぎているのに
そこに君がいない
君の為の指定席は今も変わらないままで


二人で行った一番近い海
気が付いた時にはずぶ濡れだったね
風邪をひかないようにかけたつもりのジャケット
そう言えばそれすら濡れていたっけ
何でもないささいな出来事
それすら二人にとって大事な宝物だった
もう戻る事の出来ない輝いた日々
僕が欲しかった物それは君だけなのに

そこに君がいない
もう何処にも行かない約束したよね
そこに君がいない
君を失った僕は今も変われないままで

そこに君がいない
約束の時間はもう一年も過ぎているのに
そこに君がいない
君の為の指定席は今も変わらないままで
そこに君がいない
約束の時間はもう一年も過ぎているのに
そこに君がいない
君の為の指定席は今も変わらないままで


Tomoi Fujisaki

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