『初日の出』


吐く息は驚く程白く、すぐに闇の中へと溶け込んで行く。
周囲の空気はピンと張りつめていて、
少しだけ痛い・・・。

日の出を見ることの出来る名所として有名な岬。
目前の海では、岩に砕け散る波の忘れ物が、
音もなく闇夜の中、淡く白色の霧となる。

空には無数に散りばめられた、光の宝石たち。
それも、既に淡く目の前から遠ざかって行く・・・。
ひとつ、そしてまたひとつ、空へと溶けて行き・・・。

そして水平線が、ひと筋の弧を描いた。


「寒い・・・」
ふと、わたしの口から、思わずこぼれ出てしまう、台詞 (ことば)。
そして、何も言わずに、わたしのそのかじかんでしまった手を、
そっと、握りしめるあなた。
「冷たいね」
既に、冷え切ってしまっているその手。
わたしよりもっと、冷たくなってしまっているその手。
そんなわたしの声には答えずに、まっすぐ前を見ているあなた。
人一倍照れ屋で、不器用なあなた。


目の前のちぎれ雲が、まるでその存在を誇示するかのように、
赤く、そして銀色に輝き出す。

水平線の一点が、突然輝きを増し、
そして空一面が、絵の具を溶かし込んだかのように真っ赤に染まった・・・。


それは、初めは恥ずかしげに、
そして堂々とその姿を現した。
まるで、水面から生まれ出て来た赤子のように・・・。


痛いくらいの、冷たい空気。
でも、握られたその手は、いつの間にか、
とても暖かく優しいものに変わっていた・・・。


Tomoi Fujisaki
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