『夏祭り』


遠くで、太鼓と笛の音がしている・・・。
ああ、今年もこの日がやって来たんだ。
お世辞にも大きいとは言えない、古いお寺。
その境内で、毎年行われている、小さな夏祭り。
盆踊りと何件かの出店。
そう言えば、昔、良く「おもちゃを買って」と、
だだをこねて、両親を困らせたっけ。

何も変わっていない。
そう、変わってしまったのは、私自身。

好きな女の子と二人で、綿菓子を食べたり、金魚すくいをしたり。
この日だけは、夜遅くなっても、誰も邪魔する者はいなかった。
浴衣姿の彼女。
いつもとは違う、不思議な魅力。
下駄を鳴らしながら、私の手を引く彼女。

このまま、時間が止まればと思った。

でも・・・。
時は無情にも、過ぎてしまった。
今はただ、思い出だけが、一人歩きしている。

遠くで、太鼓と笛の音がしている・・・。
思い出だけが、今もなお、
過ぎてしまった時を、物語る。

取り戻せない、貴重な時間。
終わってしまった、切ない記憶。
今もなお、変わらぬ夏祭り。

来年もまた、太鼓と笛の音が、遠くまで響きわたる事だろう。


Tomoi Fujisaki

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