『手紙』


もう、何もかも忘れ去ってしまった・・・。
そんな、私の記憶を悪戯するように、届く一通の手紙。
そして、中には一枚の古びた、写真・・・。
写真の中ではにっこり微笑んだ二人が、春の日だまりの中戯れる。
差出人なしの手紙。
古びた写真が、時の流れを物語る・・・。

ふと、昔のアルバムに手を延ばす私。
そこでは、同じ写真がもう一枚、私に微笑みかける。
アルバムに佇む、遠い過去の記憶。

セピア色した、あいつ。
そして、私・・・。

私の隣には、いつもあいつが、いた。
そして、私の隣にも・・・。

いつか良く行った、海の見える小高い丘。
二人で創った夢物語。
それも、今はもうない・・・。

現実に疲れ振り返ると、そこにはいつもあいつの笑顔。
ただ、それだけ・・・。

もう夢には戻れない、何があろうと振り返れない、
二人、歩んできた道が違い過ぎたから?
ううん、本当は私があいつと同じ道を歩めなかっただけ・・・。
それは解りきっていた筈なのに・・・。

手紙から落ちる、もう一枚の写真。
そこには、変わりきった、あいつ。
そして、見知らぬ女性(ひと)が、微笑みかける。
何処か、昔の私に似た、その女性(ひと)が、微笑みかける。

そして、私のアルバムでも、あいつの知らない男性(ひと)が、
やはり、あいつと良く似た、微笑みをつくる・・・。


もう、何もかも忘れてしまった時に届く、一通の手紙。
二人のセピア色した想い出たちが、
今もなお、微笑みかける・・・。


Tomoi Fujisaki

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