『海』


波の音が聞こえる・・・。

季節はずれの夜の海。
わずかな月の明かりで、
かすかに、波しぶきだけが白く浮き上がって見えている。

見上げると、そこには無数の星達。
手を延ばせばそれは、掴み取れるかのように、またたいている。

砂浜に座る男女。
黙り込んだまま、ただじっと波しぶきを見つめている。

波の音が聞こえる・・・。

やがて、二人はゆっくりと立ち上がった。
歩きかけた、女性の手を半ば強引に男性が引き寄せた。
驚いたように、男性の顔を見つめる、女性。

波が岩に当たって砕け散る・・・。

それは、一瞬の出来事だった。
波の音に気を取られた、その時。

すべてが、幻想のように過ぎ去って行く・・・。


波の音が聞こえる・・・。
季節はずれの夜の海。
わずかな月の明かりで、
かすかに、波しぶきだけが白く浮き上がって見えていた。


Tomoi Fujisaki

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