『夕暮れ坂道、小物語』


少年は家へと帰る為に、かなり急勾配の坂道を歩いていた。
もう秋も終わる。
校舎を出た時にはあんなにも高かった陽が、嘘のようにもう沈みかけている。

ふと、何を思ったのか少年は足を止め、坂を見上げた。
坂の上に、真っ赤な夕陽がちょうど重なって見えている。

また歩き始める、少年。
少年は、まるでこのまま夕陽に溶け込んで行ってしまうのではないかという、
軽い錯覚を味わっていた。
茜色に染まる空。
道ばたに建ち並ぶ家々は、皆、夕陽に映えて行く。
赤、赤、赤 ・・・・。
ついに、見える物すべてが赤一色に染まりきった、その時。
坂の上に、その夕陽を遮るかのように歩いてくる少女が、一人。

坂を上る少年。
坂を下る少女。
次第にその距離が縮んで行く。
何気なしに、その少女に目を向ける、少年。
ふと、二人の視線が触れ合った。

ほんの、一瞬。
時間が止まった・・・・。

立ち止まった少年の横を、通り過ぎて行く、少女。
心なしか足早になる少女。
その時、少年は気付く筈もなかった。
そう、その頬が、夕陽で赤く染まっていた為に。


Tomoi Fujisaki

夕暮れ坂道小物語 第二章 CLOSE