『夕暮れ坂道、小物語〜第二章』


少年は家へと帰る為に、かなり急勾配の坂道を今日も歩き出した
あれから、ひと月。もう季節は冬
坂の上から吹き下ろす風は身を切るように冷たい。

北国から届く冬の便り。
あともうひと月もすれば、この坂も白い薄化粧をすることになるだろう。
今にも泣き出しそうに、空は黒く低い雲に覆われている。

白い息を吐きながら、黙々と坂を上る少年。
その足が、ふと止まる。
坂の途中で自転車を覗き込む、少女が一人。
こちらからは、表情を見て取ることは出来ないが、その手は寒さでかじかんだ上に、
自転車の油で黒く汚れてしまっているようだ。
少年は、何か不思議な力に導かれるかのように、その少女に近づいて行く。
物音に、驚いたように振り返る、少女。
そしてまた、それを驚いたように見つめ返す、少年。

また、時間が止まった・・・・。
ほんの、一瞬・・・・。

おそるおそる、声をかける少年。
恥ずかしそうに顔を赤く染める少女。
今度は夕陽に邪魔されないままで、顔を赤く染める少女。
「また、逢ったね。」
少し照れながら、少年。
そして、微笑みながら、ゆっくりとうなずく少女であった。

二人のまわりを冷たい北風が通り過ぎる。
やがて、自転車を押しながら、
二人はゆっくりと歩き出した。

今度は二人。
同じ坂の頂上を目指して。


Tomoi Fujisaki

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