『雪』


AM 7:26発、上り2番線ホーム、前から3番目の乗車口。
それが、少年の指定の場所だった。

毎朝、決まった時間に起き、決まった時間に、家を出る。
何の変哲もない、日常の別に深い意味もない、単なる習慣。
そう、ある事に気付くまでは、そうだった・・・。

いつも利用している、あまり大きくはない、都心の駅。
それでも、中央付近の乗車口は、いつも人でいっぱい。
いつしか、少年はこの場所を選ぶようになっていたのであった。

そして・・・。

その隣の、前から2番目の乗車口。
ある時、少年は、そこにある一人の少女の姿を見つけた・・・。
見た事もない制服ではあるが、ここでは、別段珍しくもない事。
そう、少年も初めは気にも止めていなかったのである。

しかし・・・。

毎日の、何の変哲もない、日常の習慣。
全く同じ時間に同じ場所に並ぶ、その少女。
自分と同じ時間、そして場所。
次第に、少年に、わずかながらの興味が芽生え初めていた。

だが・・・。

時は、何事もなかったかのように、淡々と流れて行った。
桜が散り、セミが鳴き、落ち葉が舞った・・・。
そして、ベランダの隅に忘れられた、バケツの水に薄氷が張ったある日。
何気なしに、部屋の窓を見た少年は、つぶやいた。
「雪・・・?」
そう、窓の外には、白い雪が舞っていたのであった。
思わず、窓の外をのぞき見る、少年。
隣接する、建物と距離がない為、普段はカーテンを閉めていた、その窓。

そして・・・。

向かいの窓に、少年は見たのである。
そう、自分と同じように、窓の外を眺める、あの少女の姿を・・・。


何気ない、日常、そして、習慣。
ふとした、ひとつの恋物語。

とある雪の日の、そう、何気ないひとつの、お話です・・・。


Tomoi Fujisaki

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