「・・・・痛ぇっ!」
急に頭に痛みがはしった。ズキズキする。
冷たい床から飛び起きた俺は、周りの景色を見渡した。
どんよりした灰色の空。黒い海。どうやらここは船の上らしい。
するとドアから、例の妙な男達が出て来た。
・・・・俺、誘拐されたのか・・・・・?
何やら訳の判らない言葉を仲間と喋っている。「・・・何喋ってんだよ」
その男達の後ろからさっきの女の子が出て来た。
また後ろから、でっかい男が出て来る。
その男は俺にジェスチャーで何かを伝えている・・・・らしい。
「訳判らねぇ」ポツリと独り言を洩らした俺に、
いきなり男が殴りかかって来た。「お・・おい!何すんだよっ」
もがく俺を見て、あの女の子が止めに入る。
「ヤッセ!」と、続けて女の子は俺の方を向いて、
「『手伝え』って言ってるんだよ」
・・・・・あれ?今、何つった?さっきまであの変な言葉、喋ってたのに・・?
「お前、言葉通じ・・・」俺が言い終わる前に、女の子が説明を始めた。
「海へ潜ってってチョイチョイって操作すれば・・・
海底にある『アレ』を、引き出せると思うんだよね!」
一通り説明し終わると、後ろに控えていた男達が行け、と
言わんばかりに武器を突きつけていた。
「わーったよっ!やればいいんだろ、やれば」
そう言い残した俺は、船から一気に海へと飛び込んだ。
潜るとそこには、一直線に続くロープのようなものが船から出ていた。
このロープを辿って行けば例の『アレ』ってヤツに届くんだな。
俺の言葉が判る女の子も後ろからついて来てくれてるみたいだし。
・・・・・ま、あんま気が進まなかったけどね。
何とかロープを辿って、でっかい物体に着いた。
内部に高度な機械があるひらけた場所へ移ると、
俺は勘でその機械を操作してみた。・・・女の子は呆れてたみたいだけど。
でも俺の勘は当たったみたいで、物凄い音をたてながら
例の『アレ』は動き出した。満更、勘も悪くないだろ?
一仕事を終えた俺達は、出口から出ようとした。・・・けど!
また新たなモンスターが出て来た。
タコみたいなモンスター、トロス。俺は疲れた身体を振り絞って、
トロスへと刃を向けた。
・・・・・ボス敵ってやつッスね。結構、手強い。
攻撃をしようとすると逃げるし、強烈な技も仕掛けてくる。
それでも・・・俺は、絶対に勝たなきゃいけないんだ。
俺の為にも誰かの為にも。絶対に負けちゃ、いけない!
熱戦を繰り広げて、大体10分ぐらい経った頃だろうか。
トロスが全身をブルブルさせて消滅した。
・・・・勝った!喜びのあまり、ガッツポーズをぶちかましてしまった。
俺ってばオーバーアクションなのかな。ま、勝ったからいいか。
海から出て来た俺達は、船の上へ攀じ登る。
女の子は船の中の部屋へ戻り、俺も入ろうとしたら・・・・
「トヤネマホヨガ!」と言われて、船の甲板へ放り出された。
「何なんだよ!ちゃんと手伝っただろ〜!!!」
俺はまるで負け犬の遠吠えのような感じで叫んだ。
「・・・・・腹減ったぁぁぁ・・・」
メシ。メシ。どんな非常時でも、腹は減るもんだ。
俺がネガティブ思考に陥っていると、ドアが開いた。
「はい」と言ってさっきの女の子が、皿にのった食事を用意してくれた。
「おおおおおお!メシーーーーーッ!!!」
俺はそこらの野良犬みたいに、ハグハグとがっついた。
案の定、俺は喉が詰まって水を欲するようになる。
「はいよっ」と、女の子が水筒に入った水を差し出してくれた。
俺はグッと飲み込み、助かった。これで死んじゃったら、元も子もねぇからな。
一息ついた俺は、咳払いをしてから
「あなたの、お名前は?」と、女の子に尋ねた。
「あたし?あたしはリュックだよ。キミ・・・アルベド族ギライじゃないの?」
リュックが反対に質問する。そして、
「アルベドはエボンに嫌われてっからね。チイは・・・」
「チイ?チイって?」
「あ、チイは、アルベド語で『キミ』って事。」
「ふ〜ん・・・えーっと、じゃあリュック。俺さ、ザナルカンドに居たんだ。
これでもブリッツボールやってて、エースなんだぜ!
ザナルカンド・エイブスのエースっ!
そのブリッツボールの試合中に『シン』?ってゆーのがが襲って来てさ。
ココに飛ばされたみたいなんだ。・・・でさ、ココって
どこなの?俺、なんも判らないんだけど」
俺は一通り、これまでの経緯を話していくと・・・
リュックは怪訝そうな目で俺を見つめてきた。
お、俺・・・・・何か変な事言ったかな?妙な感じが、不安にさせる。
「『シン』に近づいたんだ・・・・・・・」
リュックが言った。そして続けて、
「あのね、『シン』に近づき過ぎた人間は、頭がグルグルしちゃうんだって。
だからキミも、変なユメ見ただけじゃないかな」
「・・・・・俺、病気ってこと?」と、ため息混じりで俺が言った。
「『シン』の毒気にやられたんだと思う」
「何で?」
「だって・・・ザナルカンドなんて今もうないんだもん。千年前に
『シン』が暴れて壊しちゃった。だからブリッツボールなんて、
もうできないよ。」
・・・・・・・・・ッ?千年前?ちょ、ちょっと待ってくれ。
俺が居たのはザナルカンド。でもそれは、千年前に『シン』が
暴れて、壊した・・・・?
動揺が隠せないくらいに、俺は固まってしまった。