俺はそのサハギンという魔物に向かって、刃を向ける。
1・2回攻撃しただけでサハギンは消滅してしまった。
何か可笑しい。弱すぎる。他にもっと・・・
・・・・・?変な気配を感じ取った俺は、その気配の方向へと目をやった。
赤い目・・・?薄暗い水の中のそれを、俺は目を凝らして
ジッと注意深く見る。・・・いや、違う!あれは目なんかじゃない!!!
赤く光る触手だ!
俺はその不気味な魔物が出てくる瞬間を、目に焼き付ける。
この辺一帯の海を支配する、不気味な魔物・ジオスゲイノ。
そいつは俺の目の前に出てくるとすぐに、生き残っていたサハギンを喰いちぎった。

すぐにそいつと俺との戦闘が始まった。でも、斬っても突いても堪えない。
「ふぁふひっふー!!!(まずいッスー!!!)」
と水中で俺は言った。今の俺では、そいつに勝てない。
・・・・・そんな気がしたんだ。
俺は必死に逃げられるような場所を探した。
・・・!あれだ。あの穴なら、あいつは入れないけど俺なら入れる。
この周りの海の遺跡のようなところに、その穴は繋がっている・・・
と、判断した。判断したからには、即行動ッス。
俺はいっきに泳いでジオスゲイノから離れた。
でもあいつは大きな口を開け、赤く光る触手を揺らしながら
俺を吸い込もうとしていた。
もうちょい!もうちょいで、あの穴に辿り着ける!!!

・・・・・間一髪。あいつは穴の中に入れずに、入り口で突っ掛かっていた。
ザマーミロ、だな。
俺はその穴から、どこかに繋がっていそうな階段を見つけ、昇って行った。


暫らく歩くと、丸い、ドームのようなひらけた場所へ着いた。
ドームの真ん中には、焚き火の跡。周りは崩れ落ちていて、
真っ暗だ。それに・・・・寒い。
「火・・・どこだよ」
火を焚こうと、燃えそうなものを探す事にした。

ドームの周りをグルリと周り、枯れた花束・着火器具を手に入れた。
着火器具があったのはラッキーだって思った。
だって無かったら、俺きっと凍え死んでただろうからさ。

早速、ドームの真ん中にある焚き火の跡に近づいて火を熾した。
「あったけ〜・・・・・」思わず発する、独り言。
少し落ち着いてきた俺は、床へ大の字になって平伏した。
「ハラ減ったぁぁぁ・・・・・・・・・」

ドームの天井が嫌でも目に入った。
天井には所々穴が開いてて、そこからピチャピチャと水が
滴り落ちてくるのが判る。
穴から見える空の色は、俺の心を見透かしたような灰色だった。
・・・・・夢も希望もありません・・・・・・・・・
俺はそう思いながらも、急激な眠気を感じ始めた。


「・・・・・ッ?」俺はハッとした。目の前にある火の暖かさに、
気持ち良さを感じて眠ってしまったんだろう。
我に返ると、目の前の火が消えそうな事が判った。
「お、おい・・・ちょっと待ってくれ!消えないでくれよ!!な、何か探してくっから!」
俺はそう火に話し掛けると、すっくと立ち上がった。

!!!また、だ。妙な気配。何か居る・・・・・?
すると、まるで重力を無視したかのような、壁を走っている魔物を発見した。
まさか・・・の、予感は当たった。
やっぱり。その魔物は、俺に向かって襲い掛かってきた。
「やめてくれよぉー・・・」俺はげんなりして言った。
色々とあり過ぎて疲れてたしな。身体も、中身も。

俺はその重力に逆らった魔物・クリックとの戦闘を始めた。
鋭い爪を向けて襲い掛かる。・・・でも俺も負けてらんねぇッス。
クリックに向けて俺は攻撃を仕掛けた。

5分くらい、経っただろうか。戦闘の決着はまだついていなかった。
疲れたぁ・・・・・そう思った俺は、たまらず体力回復の薬・ポーションを使った。
実はこのドームに来るまでの間、宝箱を発見したんだ。俺はその中身を
取り出してて、それがこのポーションとかいうヤツだった。
俺は体力が完璧に回復し、またクリックに向かって攻撃を仕掛ようとした。

・・・・・その時。ドームの扉から爆発が起こり、中から妙な格好をした
人達が出て来た。そしてその中の女の子が、
ナックルを使ってクリックに攻撃をした。
「味方?!助かるッス!!!」
俺はそう言うと、クリックへの攻撃を再び開始した。
すると女の子はおもむろに、ポシェットのようなものから手榴弾を取り出した。
それをクリックに投げ付けたと同時に大爆発が起こり、
クリックは消滅していった。
つ、強ぇ・・・・・いや、あれは俺でなくてもそう思った筈、だ。


戦闘が終了すると、その女の子の後ろからワラワラと
武器を持った人達が出て来た。その人達も、
女の子と同じで妙な格好をしている。俺が呆気にしていると、
急に武器を俺に突き付けてきた。
「な、何だよ!俺、何にもしてねぇだろーッ」
と慌てて足をバタバタさせて言った。
その人達は何だか理解できない言葉で話し合っているけど、
俺を不審人物だと思ってるのは確かだよ、なぁ。

スッと、さっき一緒に戦った女の子が出て来た。
仲間に「ヤッセ!」と言うと、俺に近づいて・・・・・
「ゾレン」
「へ・・・・・・・ッ?」俺は何が何だか判らなかった。ドッと鈍い音がする。
腹部に一発入れられた俺は、すぐに意識を失い、その場に倒れ込んだ。


今思うと、あれ、助けてくれたんだよな。
「ゴメン」って、言ってくれたんだよな?