異界送りを済ませたユウナと俺達は明日に備えて床に就いた。

次の日の朝。俺は宿屋から軽く伸びをして出てくると、
オーラカのメンバーが迎えに来ていた。「やっと起きたっすか〜?」
呆れた言葉を掛けられ、それでも伝えたかったことを言う。
「ワッカさんがあっちで待ってるっすよ〜」
メンバーに促されてワッカの元へ、少し小走りで向かった。

「お、来たか」と言いながら、ワッカは俺と目線を合わせる。
「ビサイド・オーラカ集合!これから寺院へ行く。
ビサイド・オーラカ必勝祈願だ!」
「おーっ!」ワッカの声にメンバー達が元気良く答え、寺院の方へと走った。

「キーリカの寺院は大召喚士オハランド様が暮らしていた処だ。
オハランド様は若い頃、ブリッツボールの名選手だったんだ」
その会話とは裏腹に、俺は沈んだ声でワッカに問う。
「ワッカ。」
「ん?」
「必勝祈願はいいんだけどさ・・・・・なんか、いいのかな。」
「ブリッツで浮かれたらマズイってか?」
「こんな時だしさ。」
「こんな時だからこそ、だ。選手は力の限りを尽くして戦う。
観客はひいきのチームを応援する。やなこと、つらいこと、
試合中だけは忘れられる。それが長い間このスピラで
ブリッツが無くなってない理由だ。・・・俺はそう思うな。」
「そっかなぁ・・・・・」
「いい試合してかっ飛ばそーぜ。なっ!」
「・・・おう!」俺は明るい声で答えた。
「寺院は森を越えたところだ。んでは行くぞ!」


ワッカと共にキーリカの森へ入っていった。
そこは草木が生い茂り、さっきまでのキーリカの様子とは異なっていた。
森の入り口にキマリ、ルールー、ユウナが佇んでいる。
ワッカは様子がおかしいと気付いたのか、ルールーに話し掛けた。
「どうした?」
ルールーはワッカではなく、俺に向かって言った。
「ユウナがね、あんたも一緒にってさ。」
そしてユウナが少し戸惑うように話す。
「あのさ・・・・ガード、お願いしちゃ駄目かな。」
「なんだそりゃ?冗談よせよ、ユウナ。こいつはブリッツは
できるけど、魔物との戦いは素人だぞ。」
ワッカが話に水を差す。それでもユウナは、
「ガードじゃなくてもいいの。傍に居てくれれば・・・・・」
「え゛っ!!!」
ユウナの意外な言動に、動揺を隠せないワッカ。
・・・ちょっとオーバーリアクションだった。

ユウナの頼みの意味が判らなかった俺は疑問を口にする。
「何それ?どゆこと?」
「それは・・・・・えっと・・・・・・・・」
意味が全く判らない俺と、返答に困っているユウナ。
その状況を見かねてルールーが口を挟む。
「どうせみんな寺院に行くんだから、話は後でいいでしょ?」
「ごめんね、突然。」
ユウナの謝罪に対して俺は答える。
「ごめんって言われても・・・何だよ、良く判らないな」
「・・・・・・ごめんなさい。」

ユウナのあまりの素直さに、俺は何も言えなくなった。

それから俺達はキーリカの森の奥深くへと入って、寺院を目指していった。