召喚士誕生の祝賀会。皆の笑顔が伝わってくるのが判った。
薄暗い夜に、広場にだけ松明が燃やされている場所。
それだけでも何故か、不思議と落ち着ける雰囲気だった。

村をぐるぐる見渡しているとワッカにまたしても捕まる俺。
・・・もう慣れてきたけどね・・・・・そして例によって、
首根っこを引っ張られて紹介された。
「こいつがどうしても!チームに入りたいって言うからよ。
仲良くしてやってくれな。・・・・・ほれ、挨拶!」
「・・・あ、ども・・・・・」
ワッカを覗いて、他にメンバーは5人。ワッカから聞いたところによると、
このビサイド・オーラカは万年初戦敗退のチームらしい。
ま、俺が入れば楽勝だけどね。
するとメンバーの1人が口を開いた。「今年も精一杯頑張るっす!」
無意識のうちに、身体が反応する。・・・・せいいっぱいがんばるぅ?
俺が突っ込みを入れるところで、ワッカが言った。
「いんや、今年は違う。今年の目標は・・・・・優勝だ!!!」
その言葉を聞いたと同時に、メンバーの顔色が変わった。
「ゆ・・・優勝?!」「優勝か・・・・」「・・優勝っ」
「優勝だ!優勝だ!優勝優勝優勝だ!!!!!」
一気に優勝コールがおこる。ワッカも頷いて、満足そうだ。
そして俺に、「その辺廻ってきていいぞ。ただし早めに休んどけよな」
と投げ掛けてから、ワッカは寺院の傍へ向かった。


「あ」と俺は足を止め、前を見た。
さっきの女の子。召喚士の・・・・・ユウナ。
話しようかな・・と思いユウナに近づくと、村のおばさんに叱られた。
「召喚士様に近づくでないわ!この掟破りめっ」
「いけないんです〜」・・・ついでに小さな女の子にまで注意される。
しょうがねぇなぁ、と思ったその時、ユウナがすっくとその場に立った。
「召喚士様、いけませんぞ」おばさんの注意も気にせず、
「私のせいですから」と言って俺の方へ向かってきた。

「さっきは・・・ありがとう。」唐突にお礼を言われ、俺はきょとんとした。
「へ?ああ、あれ・・・・マズかったんだろ?ごめん」
「いいの。私が未熟だったから・・・・・」
頬が赤く火照ってる。広場の松明と周りの暗さのせいもあるけど、
多分あの時の俺の顔、ヤバかったかも。

「明日は、一緒に行けるんだよね」
「何で?」
「同じ船で出航でしょ?ワッカさんから聞いたんだ。」
「そっか・・・・・」
「・・・・ザナルカンドのこと、聞かせてね。・・・おやすみなさい」
「ん、おやすみ」


後ろに振り返るとワッカが突っ立っていた。思わず叫ぶ。「のわ?!」
「可愛いだろ。」ワッカは単刀直入に聞いた。
勿論、「好きになっちゃったかも」と答える。
「・・・・・好きになるなよ」ワッカには似合わない、寂しげな目をした。
「それは判らないね。・・それに!向こうが俺の事好きになったらどうするよ?」
俺はユウナを見て話した。
「それはない」
また寂しそうな目。ワッカは俺の目を見て話してるのに、
どこか違うところを見て話しているようだった。「えー、何でだよっ!」
そう聞いたが、それ以上は口を利いてもらえなかった。

明日の朝が早いというので、早めに休む事にした。


・・・・・夢を見た。疲れてたんだろうけど、とても夢とは思えない夢、だった。

海の上の桟橋に座っていた俺は立ち上がり、港に小走りで向かう。
そうだよユウナと約束してたんだ。その通りで、港の先にユウナが1人立っていた。
「ごめん、遅くなって・・・」息を切らして俺が言う。
「ううん、大丈夫。それより本当にいいの・・・・・?」
「いいに決まってるよ」
「・・・・私を、ザナルカンドに連れてって」
「了解ッス!」
おお、これでハッピーエンドか?そう思った矢先に。
「こら〜〜〜〜〜〜!!!!!」こっちに向かって走ってくる女の子。
「リュ、リュック?!」
「アタシと一緒に旅するって行ってたのに〜!」
「そうなんだ・・・」ユウナが淋しそうに言った。
「え、いや違うんだよ・・・・・っ」俺は困り果てる。

「何だぁ?また泣くのかぁ?」
ビク、と身体が驚愕する。オヤジ・・・・・?
「ちっこいクセして、女と旅なんざ何事だよ」
「う・・・うるさいなっ」
「泣くぞ。すぐ泣くぞ。絶対泣くぞほ〜ら泣くぞ!」

「・・・・・だいきらいだ・・・・・・」

「あ?聞こえねぇな」
「もっと、大きく言わないと駄目だよ」ユウナが言う。

「・・・・・だいきらいだ!」

「聞こえねぇぞ〜?」
「ほら、頑張れ!」リュックが言う。「ほら、頑張れっ!」ユウナも言う。

「・・・大嫌いだーーーーーっ!!!!!」


ガバっと起き上がる。・・・そうか夢、だよな。夢じゃなきゃあんな事起こりゃしない。
少し気分転換でもしようかと、外に出ようとすると・・・・
何やら言い争いしてるようだ。聞き耳をたててみる。
ワッカとあの黒い衣装の女の人・・・・・ルールー?
只事ではない感じがしたので、そのまま話を聞いてみる事にした。