黒服に身を纏った女性・ルールーと、ワッカが口論していた。
その話題の基は俺、みたいだ・・・
「ほらアイツもよ、身寄りとかねぇし。匿ってやっても・・」
ワッカが頭を掻きながら言った。
「あの子がチャップに似てるから?」
「そうじゃねぇよ・・・」
「あの子がチャップに似てるのは・・・判る。私もビックリしたわ。けど・・」
「だろ?だから・・・」
「だって?だから?・・・・・・聞き飽きたわ!」
そう言ってルールーは去ってしまった。

「・・・あっ」
ワッカがこっちに向かってくるのに気付き、俺は思わず声をあげた。
「・・聞いてたのか・・・・」
返事はしなかったけど、うつむき加減で頷く俺。
「聞かれちまったらしょうがねぇよな」
「チャップって・・・」
「・・・・・ああ。俺の弟で、お前に・・似てたんだ」
そう言うと、ワッカがベッドに腰掛ける。俺もつられて腰掛けた。
「チャップは1年前、シンとの闘いで死んだんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ベッドの周りは薄暗くて、まるでワッカの気持ちと同調してるようだった。
兄弟なんか居ない俺は、ワッカの気持ち理解出来ない処もあるけど・・・
大切なヒトを失う気持ちは痛い程判ってる。
「だからな、俺はシンを打ち倒そうって決めたんだ。
これ以上弟みたいな犠牲・・出して欲しくねぇしな」
「・・・・・ん・・・」
「あ゛〜・・悪かった。暗い話にしちまってよ」
「いや・・・・俺、ワッカはいいヤツだと思ってるし。俺は感謝してるよ」
俺は言うと、ワッカに対して手を差し出した。
これはホントの、ホントの気持ちだったよ。
「よ・・・よせよ〜っ照れんじゃねぇかー」
ワッカは恥ずかしそうだったけど、嬉しそうだった。
・・・・・結局手は握ってもらえなかったけどね。



朝。起きるとワッカの姿は見えなかった。
俺は立ち上がるとすぐに外の方へ向かった。

「お〜い、ねぼすけっ」
声が掛かった方向へ目を遣ると、ワッカとルールーが立っていた。
「これ。やるよ」
ワッカが差し出したのは剣。まるで海をそのまま閉じ込めたような
蒼い蒼い、フラタニティという一振りの剣。「すげーっ!これ貰っていいのか?」
歓喜の声をあげた。そして軽く剣を振ってみる。
そこにルールーの声が響いた。「それ・・・・!チャップにあげたやつ」
「・・・え?そうなのか?」
「ああ、いいんだ。あいつはあげても使わなかったからな」
何となく気まずい雰囲気が流れたところに、ユウナがやって来た。
「お!ユウナーっそろそろ行くぞーっ」
「早くしないと船に乗り遅れるわよ」
ワッカとルールーが急かしているのも関わらず、
ユウナは大きな荷物を抱えて出て来た。
「よいしょっと・・・」
「ユウナ!そんな荷物、邪魔になるだけよ!」
「あ・・・私の荷物は何もないの。お世話になる寺院へのおみやげ。」
「・・・・・ユウナの旅、そんなんじゃないだろ?」
「・・・そっか。そうだよね」
ユウナは大きい荷物を、ワッカの一言で手放した。

「おーし!んじゃ、出発しますかっ」
俺達は村を出て行った。だけどユウナだけ後ろを振り返り、
村全体を哀しい目で見つめていた。
そして軽く礼をして、俺たちに追いついた。

その頃は全然、理解らなかった。
ユウナの旅の意味も、ユウナの行動も。