港へ向かう途中、村全体を見下ろせる崖にたどり着いた。
空気が澄みきっていた。
「・・・・・良く、見ておく?」ルールーがユウナの顔を伺い、言う。
「早く行こうぜ〜っ!」俺がせかすのにも関わらずに、
「少しの間、待つ。」とワッカが言い出した。
「あ?」ユウナが暫く村全体を眺めると、俺達の処へ戻ってきた。
少し、哀しげな眼をして。
「もう・・・いいのか。」
「うん。」俺の他の3人の様子が、何処かおかしかった。
少し進んだ処で遺跡のようなものが立ち並んでいる場所へ着いた。
すると風が聞こえてきて、正面から『何か』が近づいてくるのが判った。
「・・・・・・・・・・?!」
その『何か』の正体はあの、試練の間に居た蒼い獣人。
爪を立てて地面を討ち、俺に向かって襲いかかってきた。
何が何だか判らなかった俺は、一応応戦してみたけど・・・かなり強くて、
正直言って負けそうだった。その時、
「もういいだろ!」
ワッカが止めに入った。獣人は首を横に振り、不満足そうな顔をして
俺に背を向けた。「何だよアイツ!」
「キマリ=ロンゾ・・・・・ロンゾ族の青年。魔物の技を覚えて使いこなす。」
「・・・そういう意味じゃなくてっ」そうルールーに対しての突っ込みを入れた俺に、
「アイツもユウナのガードさ。」とワッカが付け足す。
「はあ?」
「私達にも、良く・・・・判らないんだ。キマリってとっても無口だから。
でも私が子供の頃から、ずっと守ってくれてるの。」
「はあ・・・・・」
蒼い獣人・キマリが加わり、旅を再会した。
あの時のキマリの気持ち。今は良く判ってるつもりだよ。
浜辺に着いた。港までは桟橋が掛かっていて、そこから船に乗るらしい。
桟橋を渡っていると村の人達がお別れの挨拶に来ていた。
あれ程騒いでいたのに、何だかここに居る人数が少ない。
俺は変だと思って村人に聞いてみると、
「ユウナ様とのお別れに来たつもりだったが・・・ここに来ない連中の
気持ちが判ったよ。ここに来ると、余計別れが辛いや・・・・・・」
ああ、そっかって納得できたよ。そうだよな、ユウナの小さい頃から
面倒見てやってきたヒトが、別れが悲しくない訳ないもんな。
俺達が全員船に乗り込むと、船は海へと進んでいった。
「ユウナ様ーーーっ!!!!!」
別れを惜しんで、泣きじゃくる子供が船を追いかける。
ユウナ自身も辛そうだった。
船の上から精一杯のお礼の言葉と、一礼。
「・・・・・・・・・さようなら。」