ユウナが海へ落ちてしまう!絶体絶命だったその時、キマリが駆け寄り、
ユウナを助けた。間一髪だったけど俺はちょっと複雑で・・・・・
俺のすぐ側に居た船員が、『それ』を見つけて驚き、叫ぶ。
「『シーーーーン!』」
その船員は叫んだと思うと、船首にあったワイヤーフックを『シン』へと向けた。
「そりゃワイヤーフックだろーがっ!そんなもん撃ち込んでどうするよ?!
船ごと海に引きずり込まれんぞ!!!」と、ワッカが慌てて口を挟む。
「『シン』はキーリカへ向かっている!あいつの注意を引きつけたい!!」
「キーリカには俺達の家族が・・・召喚士様、お許しを!」
皆の視線がユウナに集まる。するとユウナは、頷いてみせた。
「・・・・待てよっ本気かよ?!」うろたえるワッカを後目に、船員はシンに向かって
2本のワイヤーフックを撃ち込んだ。
『シン』は海に背ビレを見せながらこちらを気にせず全速前進し続ける。
海水が船体に激しく舞い散り、俺達は振り落とされないよう必死にこらえていた。
2本のワイヤーフックは背ビレに食い込み、船は衝撃を諸に食らうようになる。
『シン』に引きずられながらも、俺達は船上で戦うことを決意した。
ザナルカンドに現れたような『シン』の中から出てきた生物・・・・・、
まるで蛾のような生物が船に向かって飛来し、俺達をひっきりなしに襲う。
対戦していても何匹も出てきて、痺れを切らした俺はつい言葉を漏らす。
「何匹出てくんだよっ?!」
「・・・・背ビレだ!『シン』の背ビレを攻撃するんだ!!」
ワッカはそう言うと、黒魔法の使い手・ルールーとユウナの召喚獣と共に
背ビレを攻撃し始めた。俺は接近戦しか出来ない為に船体にしがみつき、
皆の接戦を見守ることしかできなかった。
ルールーの攻撃魔法サンダーでトドメをさせたかと思うと、それは勘違いで・・・
船体と『シン』とを繋いでいたワイヤーフックが切れ、『シン』を取り逃がしただけだった。
それでも波の衝撃は続いていて、俺はその衝撃に飲み込まれ
海へと放り出されてしまった。
それから暫くして気が付くと、そこは薄暗い海の中。
ワッカが助けてくれたのか・・・と思ったのも束の間、俺とワッカの眼前には
『シン』のそぎ落としていったクラゲのような生物が現れ、俺達に猛攻撃を開始した。
体力があまり残っていなかった俺は、ワッカに頼りがちになってしまった。
それではいけないと流石に思い俺も俺なりに接近攻撃を始める。
敵を盲目にするワッカの攻撃・ブラインアタックが効いたのか、
さほど敵の攻撃を受けることなく戦闘ができた。
こっちも必死だったけど、力を振り絞ってトドメをさす。
そして敵は光を放って海の藻屑と化した。
気が付くと俺は、船の上でユウナの膝の上に寝かせられていた。
どうやら助かったらしい。・・・・・・俺は。
でもキーリカの人達は・・・『シン』の攻撃で・・・・・
木くずや布が海水の上に浮かぶ。水面は橙色。夕焼け空の、悲しい色。
ザナルカンドで『シン』に襲われて、気が付いたらスピラに居た。
だから、もう1度『シン』に会えたら、家に帰れるって期待していた。
「私・・・『シン』を倒します。必ず倒します。」
キーリカの無惨な姿を前に、ユウナが言った。きっと歯痒かったんだ、と思う。
なんて甘いことを考えていたんだろう・・・・・・・
あの日、あの時、あの燃えるような夕日の下。
俺は思い知ったんだ。ここは俺の知らない世界で、そう簡単には帰れない。
これが逃れようのない現実だと、やっと判った。