「・・・・・アーロン?!」俺は急いで立ち寄った。
「アーロン!何やってんだよ!!!早く逃げろよッ!」
アーロンは黙りこくったまま俺を少し見ると、立ち去って行った。
・・・・何なんだよっ・・・俺はそう思いながらも、
アーロンの背中を追いかけて走る。
フリーウェイは沢山のヒト達が駆け巡っている。
俺は一人一人の不安そうな顔が、手に取るように判った。
そりゃぁ、俺だって不安だったさ。
でも今は必死にアーロンを追う事だけで、手いっぱいだったからな。
「はじまるよ・・・・・」
後ろだ。俺の後ろで、誰かが言ったんだ。
振り返ると、さっき居たフードを被っている子供が立っている。
・・・・・・・・・ッ?!俺は妙な気配を感じた。
周りの時間が、止まる。
さっきまで逃げ惑っていたヒト達が、まるで魔法にでも掛かったみたいに。
「泣かないで・・・・・・・」
続けて、フードを被った子供が喋る。
「あ・・・・?」俺は口をあけて呆然とした。
「わーっ!!!!!」急に周りの時間が動き出した。
さっきの子供は・・・・どこにも居ない。
俺は正面を向いて、また走り出した。
するとアーロンが突っ立っている。「なあ、こっちヤバイって!!!」
俺は息を切らしてアーロンに近寄った。
「見ろ」アーロンが口を開いた。
「え・・・・・?」
多分、あの時の俺の目、真ん丸だったんだろうな。
この世のものとは思えない、不思議な、巨大な、水の球体。
俺は思わず、後ろ足をたってしまった。
「な、何だよあれ・・・?」アーロンに問いただす。
「俺達は『シン』と呼んでいた」
「・・・・『シン』・・・・・?」俺は何が何だか判らないような顔で、
アーロンの顔を見た。
と、途端にその巨大な水の球体『シン』から、
無数のウロコのようなものがフリーウェイに降り注いだ。
アーロンは俺に呼び掛ける。
「ジェクトのみやげだ」と言い、俺に赤い剣を渡す。
「オヤジの・・・・・?」
急に前に飛び出てきた、無数の『シン』のウロコ。
それはまるで蛾のような形へと変形していった。
「行くぞ!」アーロンの一言で、何とか俺は剣を持ち、
その蛾のようなウロコを倒す事が出来た。
その先には、イソギンチャクみたいなものが立っていた。
あれも『シン』かよ?!・・・そう思いながらも、アーロンの支持で
何とか倒す。結構疲れてきた。
安心したのも束の間、さらに増えて出てきた、『シン』のウロコ。
倒しても倒しても出てくる、無数のウロコ。
キリねぇよっ・・・・呆れてきた俺に、アーロンが提案を出す。
「あれが使えそうだな」と、横目でタンクローリーを見る。
「タンクローリー?何すんだよ?」俺は答えた。
「あれを落とすぞ!」そう言ったアーロンは、先にタンクローリーを
攻撃した。しょうがねぇなぁ・・・と俺も、タンクローリーを攻撃する。
何回か攻撃を受けたタンクローリーは、バチバチと音を立てて
下へ落下した。すると、物凄い音を立てて爆発し、道路もろともウロコを
消滅させた。「行けっ!!!」アーロンの声が、俺の耳に響く。
目の前には割れた道路。これを飛んで、向こうへ行けってのか?
でも、この先は・・・・・『シン』が居るだろ?!
そんな事考えながらも、俺は力いっぱい飛んだ。
何とか助かった。けど、この状態はヤバイ。
例によって、またガレキの上に乗っているのは俺の手だけだ。
するとそのガレキの上にアーロンが立っていた。
「アーロン!!!!!」俺は助けてくれと言わんばかりに、叫んだ。
「・・・・・・・いいんだな?」
アーロンは上を向いて、言った。まるで『シン』に喋りかけたようだった。
上では『シン』が、口のようなものを開けて建物やら何やらを吸い込んでいる。
「覚悟を決めろ。他の誰でもない」
そう言って、俺の胸倉をつかんで上に持ち上げた。続けて、
「これは、お前の物語だ!!!」
そう叫び、アーロンは『シン』へと吸い込まれていった。
俺も意識が飛び、『シン』へと吸い込まれていった・・・・・・・
ここは・・・・・?
俺は周りの景色を見る。
ザナルカンドに似てるけど、違う。何となくそんな感じがする。
でもそれとは違う、何かを感じる・・・・・
不安?いや、違う。昔感じた何か。
・・・・・・・・・オヤジ?
また意識が飛んだ。体が羽根のように軽くなり、
異次元へ飛ばされたような、感じ。
俺の予想って、こういう時には当たるんだよな。
気が付くと、急に口の中に水が入ってきた。
「ぶわっ?!」
顔を上げる。どうやら俺は水面に浮いてたみたいだ。
俺は周りを見渡す。灰色の空、灰色の海。
ところどころに、神殿のような場所がある。
・・・・・・・孤独。
俺は急に寂しくなった。そして叫ぶ。
「誰か居るーーーーーー?」
・・・・・・・沈黙。
「アーロンーーーーーーッ!!!」
・・・・・・・沈黙。
「わーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!」
俺は叫んだ。腹の底から。・・・木魂する俺の声が、ただただ響くだけ。
・・・・・・・?!視界に、黄色い、跳ねる物体が入る。
「おわっ?」俺の頭の上を、それがかすった。
これ以上外に出てても危険だと察知した俺は、
思いっ切り息を吸い、水の中へと入っていった。
こう見えても俺は水中のゲーム・ブリッツボールの選手だ。
水中での戦闘なら、何とかできる!そう思ったんだ。
俺は赤い剣、あのロングソードを懐から取り出し、
その黄色い跳ねる物体、サハギンというモンスターに向かって、刃を突き出した。