皆は何ともやりきれない、みたいな顔で、火を囲んでいる。
ユウナも・・・・・・・・
ついにここまで来てしまったんだ。
俺の、物語。
「最後かもしれないだろ?だから、全部話しておきたいんだ・・・」
俺は家を出た。何てったって、今日はブリッツの試合。
その試合の名前は、気に入らないけどな。
「ジェクト記念トーナメント」なんて、くだらない。でも・・・
試合は大事だ。だから俺は家を出た。
家を出ると、すぐにザナルカンド・エイブス、俺のチームの
ファンの子達が沢山待ってくれていた。
「サインして下さい!」と女の子がボールを差し出す。
「はいはい、ちょっと待ってな〜」
「サインして!」と、今度は男の子がボールを差し出した。
俺はザナルカンド・エイブスのエースなんだ!と自慢するかのように、
俺の家の周りには沢山のヒトで溢れている。
サインを一通り書き終わったところで男の子達が、
「ブリッツ教えて!!!」って強請ってきた。
「今から試合だっつーの!」俺は断った。
「え〜?!」男の子達は残念そうにしてたっけ。
あの約束、結局できずにいたもんなぁ。
「今日は・・・・・駄目だよ。」
急に耳に響いた誰かの声。俺は振り向くと、
フードを被った子供が1人、そこに居た。
「だろ?だからまた今度にしよう」
男の子達はそれを聞くと、俺に『ブリッツボールのおまじない』
ってヤツをしてくれた。それ、あの後から忘れちゃったんだよな・・・
俺はブリッツスタジアムに向かう為、フリーウェイという、超高層ビルに
囲まれた道を走って進んだ。その中のビルに、ジェクトの映像が映っている。
俺はその画を睨んで、また急ぎ足で前へと進んで行く。
ジェクトは・・・俺のオヤジだ。ザナルカンド・エイブスの、元エース。
俺が子供の頃、突然消えたんだ。あんたのあの顔、
見られなくなるようになってホッとしたよ。
でもその後から・・・余計にあんたの名が重く感じて嫌だった。
「ジェクトの息子だから」とか、皆そういうのばっかに期待してる。
俺は、俺だ。ブリッツの選手として、ザナルカンド・エイブスのエースとして、
俺は頑張ってるのに・・・・誰も、認めてくれないんだ。
スタジアムについた。試合には何とか間に合ったけど・・・・・
何だろう、この感じ。何かが始まるような・・・終わるような。
試合には感じない、この感じ。俺はその不安を胸に、
試合に望んだ。
俺は相手の選手をタックルで突き飛ばし、ボールが自分の手に渡った。
いける!俺は自信を持ち、プールの上にスピンジャンプして
ボールを蹴ろうとした。
「え・・・っ?」
その瞬間。俺は・・・丸い水の球体から、光る弾丸が出てくるのをはっきりと見たんだ。
脅威の一瞬。スタジアムが一瞬にして崩れた。
「うわああああぁぁぁっ!!!!!」
ガレキに何とかつかまる事が出来たけど、手が痺れてもう限界・・・
俺は一気に落下していった。
気が付くと、冷たい床に頬を付けて、俺は倒れていた。
何とかスリ傷程度ですんだけど・・・・・
この状態。何が何だか判らないッス・・・
周りの超高層ビルは破壊されて、空はどす黒い。
恐怖さえ覚えた、あの景色。
俺は何かを求めて、走り出した。
すると、そこに赤い服を着た、見知っているヒトが立っている。
「・・・・・アーロン?!」