東日本大震災の記憶
 
- 超渋滞現象 -
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 自動車が身動きできない程の渋滞をグリッドロック(超渋滞現象)といいます。下図を見れば、自動車が避難の手段として有効では無いことが理解できることでしょう。このような状況になれば、救急車、消防車、パトカーといった緊急車両の機動力を奪うことになり、救える命も救えなくなります。

グリッドロック

 東日本大震災の発生直後、大規模な停電が起きました。東北地方の沿岸部では、停電が原因で、さがりっぱなしになった踏切の遮断機が交通渋滞を引き起こした場所がありました。
 踏切は安全を優先し、停電時には原則、遮断機が下りる設計になっています。つまり、停電時には開かずの踏切になるのです。
 宮城県東松島市では、停電により踏切が上がらず、100メートル以上の渋滞が発生しました。車から降りて逃げた人もいたそうですが、車に乗ったまま津波にのまれた人もいたそうです。
 停電時、遮断機が下りた現場で、列車が来る、来ないを判断することは困難です。誤った判断をすれば、命の危険さえあります。

 踏切以外でもグリッドロックは発生します。
 橋を渡るために、いっせいに自動車が殺到すると橋の手前で渋滞が発生します。渋滞を避けるために脇道に入るのですが、そこも渋滞しています。抜け道をさまよっている間にも、橋を渡ろうとする自動車が殺到してきます。しだいに橋の周辺の道路は自動車で埋め尽くされ、前進も後進も、右折も左折もできなくなってしまいます。
 地震によりアスファルトがめくり上がり、自動車での移動を妨げてしまう例もあります。渋滞によって移動できなくなるのではなく、巨大な地震は、道路そのものを破壊してしまうことがあるのです。
 震災後の調査によって、宮城県石巻市では深刻なグリッドロックが発生していたことが明らかになりました。

 災害時、車で避難したことによって、かえって避難できない状況に陥ることがあります。途中で車を乗り捨ててしまった場合、渋滞の原因を作ってしまうことにもなります。その渋滞が原因で緊急車両の機動力を奪ってしまうことも容易に想像できます。
 やむを得ず自動車を乗り捨てる場合は、エンジンを切り、鍵を車に残したままにしておくことが推奨されています。鍵に暗証番号を登録している場合は、解除してから車を乗り捨てましょう。そうすれば、乗り捨てた車が原因で緊急車両の動きが妨げられてしまった時、乗り捨てられた車を誰かが移動してくれることでしょう。